2013年2月10日日曜日

MSP430 LaunchPad用 Spy-Bi-Wireアダプタキット

あらまし

先に実験を行っていた、MSP430 LaunchPadからSpy-Bi-Wireの信号線を引き出して、LaunchPadの3.6Vとは異なる電圧電源のシステムに搭載されたMSP430マイコンのSpy-Bi-Wire端子と接続するためのアダプタのキット化を行いまして、コミックマーケット84にて頒布しましたが、その回路方式と機械的な実装方式について紹介します。


まえがき

安価なMSP430 LaunchPadを、ターゲットシステムの電源電圧がMSP430の動作電圧範囲(1.8V~3.6V)全域にわたって対応可能なICEとして使用できるようにするための、レベル変換アダプタを検討していました。

LaunchPadから引き出すことができるデバッグ用の信号であるSpy-Bi-Wireは、2本の信号線で構成されており、その構成は単方向の信号であるSBWTCKと、双方向の信号であるSBWTDIOの2本です。SBWTDIOの方向制御を行う信号は出力されないため、高圧→低圧と低圧→高圧の双方向レベル変換を制御信号なしで行う必要があります。

当初は、双方向レベル変換専用ICのTXS0104Eを使用していましたが、I2Cの仕様書に掲載されていたMOSFETとその寄生ダイオードを使う方式を基にした回路方式の実験がうまく行きましたので、その方式を元に基板を製作してキット化しました。

基板については、TIから発売されているLaunchPad用の容量性接触センサのモジュールの実装方式を参考に、LaunchPadの基板両端にある10ピンピンヘッダ取り付け用の穴と同一位置に10ピンのソケットもしくはピンヘッダを取り付けることで、基板をスタッキングできるようにしています。

また、ターゲットシステムへの接続は10芯のフラットケーブルを使用してSpy-Bi-Wireの2本の信号とターゲット側の電源及びグランドの接続を行う仕組みとしています。フラットケーブルと接続するコネクタのピン割り当ては5ピン×2列の構成に対して隣り合う列のピンに同一の線を接続し、ケーブルには極性キーのないコネクタを両端に圧接することでコネクタの接続方向の自由度を高める工夫を加えています。

回路方式

回路構成は回路図の通り、ごく単純なものです。

回路図の左側が低圧(ターゲットシステム)に接続される部分で、回路図の右側に示した2個の10ピンの端子が高圧(LaunchPad)側に接続される部分となります。

低圧(ターゲットシステム)側は低圧(ターゲットシステム)側の信号にMOSFETのソースを接続するとともに低圧側のVCCでプルアップし、ゲートは単純に低圧側のVCCに接続しています。また、低圧側から高圧側に電流を流せるように寄生ダイオードと並列にVFの小さなショットキーダイオードを接続しています。

動作としては、ターゲット側から信号がLowにドライブされてVGS>VthとなったときにMOSFETがONになりMOSFETによって高圧(LaunchPad)側の信号線がLowにドライブされることを利用した低圧→高圧レベル変換と、高圧側から信号がLowにドライブされたときダイオードを通じて低圧側の信号線がLowにドライブされることを利用した高圧→低圧レベル変換の機能を、一本の信号線上に付加した形になります。

基板レイアウト及び組み立て方法

基板レイアウトの特徴

両サイドの10ピンコネクタ(ソケットまたはピンヘッダ)は、LaunchPadの表側または裏側に取り付けられるように配置しています。

中央のフラットケーブル接続用10ピン(5×2)コネクタは、LaunchPadとは反対側の面に取り付けるようにしていますが、このときLaunchPadに接続される側の信号線のプルアップ抵抗R1の配置が不適切であったために、コネクタのシュラウドと干渉してしまいます。

LaunchPadに接続される側の信号線についてはLaunchPad上にプルアップ抵抗が実装されていますので、このアダプタでは必ずしも取り付けなくても構いません。

組み立て方法

基板は鉛フリーハンダによるハンダメッキ仕上げになっていますので、鉛フリーハンダを使用する工具が使用可能です。

面実装部品の取り付け

最初にMOSFET、ショットキーダイオード、抵抗の各面実装部品を基板に取り付けます。このとき、このアダプタをLaunchPadの裏に取り付けるようにする場合はR1を取り付けないようにします。

ソケット及びフラットケーブルコネクタの取り付け

LaunchPadの部品実装面側にこのアダプタを取り付ける場合
10ピン×1列のコネクタを面実装部品を取り付けた側の面に取り付けます、フラットケーブルコネクタはその裏面に取り付けます。
LaunchPadの部品実装面の裏側にこのアダプタを取り付ける場合
10ピン×1列のコネクタを面実装部品を取り付けた面の裏側に取り付けます、フラットケーブルコネクタはその裏面に取り付けます。

基板両サイドに1列×10ピンのコネクタ(ソケットまたはピンヘッダ)を取り付けますが、このときLaunchPadの1列×10ピンのピンヘッダ(またはソケット)に取り付けてからアダプタの基板をかぶせるようにして取り付けるとハンダ付けが簡単に出来ます。

まとめ

LaunchPadに直接搭載することが可能な、I2Cのレベル変換回路を基にしたSpy-Bi-Wire用レベル変換アダプタの紹介をいたしました。

再度の頒布については追って公表する予定です。

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